ペットとの生活の中では必ずいつか「お別れの日」がやってきます。ペットは人間よりも寿命が短いため、飼い主様が看取ってあげる必要がありますね。しかし、ペットの看取りに関しては、どのような準備をしておけば良いのかなどがわからない方も多いでしょう。

今回は、看取りとはなにかを解説し、ペットを看取るためには、具体的にどのような準備をしておくべきなのかをお伝えします。いざその時がきた時に冷静に対処できるように、何をすべきかを詳しく説明します。看取りと密接な緩和ケアやターミナルケアなどの医療にはどのようなものがあるのか、看取ったあとの火葬・埋葬の方法や、役所への必要な手続きなどに関しても徹底的に解説していきます。

そもそも看取りとは?

命の最期を見届けることを「看取り」と呼びます。もともとはそばにいて世話をしたり、看病したりするという行為を示す言葉でした。最近では動物病院で治療を受けながら最期を迎えるペットも多く、命の最期の瞬間に立ち会い見送ることを「看取り」と言います。ペットも最期にそばにいて欲しいのは飼い主様です。動物病院で治療を受けている場合でも、最期の瞬間は飼い主様がそばにいて、愛情をしっかりと伝えて看取ってあげることが理想です。

看取りをするときにしてあげたい事

悔いのない看取りをするためには、準備が必要です。

ペットを看取るための準備

看取りには、動物病院で看取る方法と自宅で看取る方法があります。動物病院で看取るメリットとしては、ペットに最期までできるだけ苦痛のない医療を提供できることです。一方で、最期の瞬間に間に合わなくなるというデメリットもあります。自宅で看取る場合は、飼い主様がずっとそばにいてあげることができます。ただし、命の終わりにペットの様子が変化して、うろたえてしまう可能性もあります。最期の瞬間におこりえる変化について、獣医師に聞いておきましょう。

亡くなると、体の筋肉が弛緩してうんちやおしっこが出てくることが多いです。そのため、周囲や体を綺麗にしてあげるために

  • ペットシート
  • タオル
  • 水のいらないシャンプー
  • ブラシ
  • コットン

などのグッズを用意しておきましょう。

亡くなったあとは納棺してペットを冷やしてあげなくてはなりません。

  • 保冷剤、保冷ジェルなど冷やすもの

が必要です。棺に入れてあげたいペットのおもちゃやお花も用意しておくと良いでしょう。

5つのするべき事

ペットを看取ったあと、具体的にすべきことを解説します。

  1. 体を綺麗にする
    まず、目や口をそっと閉じてあげましょう。排泄物によってお尻の周りが汚れています。水のいらないシャンプーなどを使い、清潔にしてあげましょう。毛に毛玉ができたり艶がなくなっていることも多いため、ブラシで毛並みを整えてあげます。口や肛門から体液が出続ける場合はコットンをまるめてしばらく詰めておいても良いでしょう。
  2. 死後硬直前に手足を整える
    死後硬直は、犬猫の場合およそ2~3時間ではじまります。その前に手足を胸の方に折り曲げて棺に入れやすくしておきます。
  3. 棺に保冷剤などを敷く
    棺の中に、お気に入りのタオルなどを敷いてあげ、体を冷やすだめの保冷剤を敷き詰めます。その上からさらにタオルを敷くと良いでしょう。棺はネットなどで購入できます。ペット専門霊園などでも購入できるため、早めに用意しておくのが望ましいです。
  4. 納棺する
    遺体を納棺したら、再度保冷剤などを周囲に入れます。特にお腹側に多めに入れてあげましょう。お気に入りだったおもちゃや、お花を添えてあげましょう。
  5. ペットと最期のお別れの時間を過ごす
    綺麗に納棺できたら、最期に会ってもらいたい人などに連絡しましょう。親しい友人などに来てもらい、しっかり見送ってもらうことで飼い主様の心の整理もついてきます。その時はつらくても、写真も残す方が悔いが残らないことが多いでしょう。

ペットの緩和ケアについて

緩和ケアやターミナルケアという言葉を聞いたことがある方もいるかもしれません。ペットの看取りと緩和ケア、ターミナルケアは密接な関係があります。ここではそれぞれについて解説します。

ペットの緩和ケアとは?

緩和ケアという言葉は、成すすべのない状態への対処のように誤解されがちですが、そうではありません。人の緩和ケアはWHOによって「生命を脅かす疾患による問題に直面している患者とその家族に対して、痛みやその他の身体的問題、心理社会的問題、スピリチュアルな問題を早期に発見し、的確なアセスメントと対処(治療・処置)を行うことによって、 苦しみを予防し、和らげることで、クオリティ・オブ・ライフを改善するアプローチである」と定義されています。つまり、治療の初期から受けることのできるケアのひとつであり、完治を目指す治療のひとつでもあるのです。

ペットの緩和ケアの考え方

ペット領域において、緩和ケアは多くの場合、あらゆる苦痛を緩和させるための医療というように捉えられます。手術や抗がん剤などの積極的な治療と同時に緩和ケアも開始し、その後の進行によって積極的治療と緩和ケアの割合を考えていきます。

具体的な緩和ケアは、麻酔や鎮痛剤を利用した痛みの緩和や、流動食や点滴による栄養摂取などです。呼吸苦のあるペットへの酸素室の利用やなど、従来の獣医領域で用いられる治療法が適用されるほか、最近ではペットの状態に合わせてマッサージ療法や鍼灸など西洋医学以外の補助療法を取り入れることもあります。

動物病院の方針により、色々な考え方のある分野でもあるため、できるだけ飼い主様の希望に近い緩和ケアを行う動物病院を探すことが良いでしょう。

ペットのターミナルケア(終末期医療)とは

ペット領域において、ターミナルケアと緩和ケアは明確に区切られないことが多いです。ただし、緩和ケアと比較するとターミナルケアは「看取り」にやや近い言葉だと言えるでしょう。命の最期に近づいた動物に対して、積極的な治療はほぼ終了させて、苦痛を取り除くことに注力する治療です。

それまで行っていた治療のなかで、何を続け、なにをやめていくかを考える段階になります。例えば、流動食などを与えたり、点滴で栄養を取り入れていたペットも最期になるとそれすら苦痛になることもあります。本当に何もしないという選択も出てきます。反対に、苦痛が強いペットの場合、麻酔などの利用でほとんど寝ている状態を維持することもあります。

ペットを看取った後にやるべきこと

ペットを看取っても、飼い主様にはやるべきことがあります。ここでは看取り後にすべきことをお伝えします。

火葬、埋葬の方法を調べておく

以前は、ペットが亡くなると自宅の庭などにそのまま埋葬する方も多かったようですが、最近は火葬が一般的だと言えるでしょう。火葬は、専門のペット葬儀会社を利用する方が増えました。

訪問火葬車と言って、遺体を引き取りに来てくれて火葬してくれる業者もいます。業者を頼れない場合には、自治体が安い料金で遺体を引き取って火葬してくれます。その場合遺骨は戻ってきません。火葬したあとのお骨の埋葬方法も様々なものがあります。

ペット霊園・寺院への埋葬や、ご自宅で手元供養する方もいます。散骨する方法もあります。どのように火葬し埋葬したいかをしっかり調べ、悔いのないようにしましょう。

自宅で遺体を安置させる場合

葬儀会社などに依頼して火葬する場合、必ずしもすぐに行えるとは限りません。しばらく自宅での安置が必要な場合があります。上で解説したように、棺にしっかりと保冷剤などを入れて、できるだけ涼しい場所に安置しましょう。遺体が濡れてしまうと腐敗してしまう可能性があるため、通気性の良い場所や、可能であれば扇風機などで風を送っておくと良いでしょう。

役所での手続き

犬が亡くなった場合、死後30日以内に死亡届を提出する必要があります。飼育の届けを出す時に渡された鑑札も返却しなくてはなりません。死亡届はインターネットでの手続きが可能で、鑑札も郵送が可能です。

まとめ

ペットを看取ることは、楽しい日々の締めくくりであり、飼い主様として愛するペットにしてあげられる最後のことです。悔いのない看取りができるように、ペットがまだ元気なうちから、ペットの最期をどこでどのように迎えたいのか、考えておくと良いでしょう。家族がいる場合には、家族全員でしっかりと考えを一致させておくことも大切です。緩和ケアやターミナルケアについて勉強し、ペットに何をしてあげたいのか決めておくことも必要です。

動物病院の方針や規模によって、緩和ケアやターミナルケアに対して対応できることは様々です。例えば、自宅で看取りたい場合、往診が可能かどうかなど飼い主様の希望が叶うのかどうか、獣医師ともよく相談しましょう。