愛犬が亡くなったあと、飼い主様は何をすれば良いのでしょうか。亡くなったあとの処置や葬儀、お別れの方法について悩む飼い主様も多いですね。動物が亡くなると「死後硬直」という現象が起こります。死後硬直の特徴を知って、遺体を適切に処置することが大切です。

今回の記事では死後硬直に着目し、メカニズムや特徴、死後硬直前後に飼い主様がすべきことなどについてお伝えします。是非参考にしてみてください。

死後硬直とは?

普段聞くことのない「死後硬直」とは何なのでしょうか。死後硬直とは、死後しばらくして筋肉が収縮し、関節が動かせないほど体が固まる現象のことです。死後硬直には、生物の細胞内に存在するATP(アデノシン三リン酸)という物質が関係します。ATPとは、すべての生き物の細胞内に存在し、エネルギーの供給を行う物質のことです。

生き物が死ぬと、やがて体内のATPが枯渇します。生前はATPによって筋肉の細胞内のカルシウムイオン濃度が管理されていますが、死後、ATPが無くなると、筋肉の細胞内カルシウムイオンの濃度が上がります。カルシウムイオン濃度が上昇すると、筋肉が弛緩しなくなり、死後硬直が起こるのです。

犬の死後硬直の特徴

犬の死後硬直の特徴

上では死後硬直そのものについてお伝えしました。ここでは犬の死後硬直の特徴について解説します。

死後硬直が起こる時間

犬の場合、死後硬直は亡くなってから1~2時間経過するころに始まることが多いです。一般的に、体が小さいほど死後硬直は早く始まる傾向にあります。死後硬直は早いと12時間程度で終わり、長いと24時間程度で終わります。

ただし、死後硬直には犬の体格や筋肉の付き方、亡くなる時のATPの量などが関係するため、死後どの程度の時間で始まり、何時間続くかには個体差があると言えます。

犬の死後硬直の特徴

犬の死後硬直は、顎の筋肉や前肢、後肢などの比較的小さな筋肉から始まり、腹部や背中など大きな筋肉の順番に硬直していくことが多いと言えます。顎や前肢後肢の死後硬直は、比較的早い段階で始まることが多く、愛犬の死を悲しんでいる間に死後硬直が始まり、突っ張ったままの姿勢になってしまう、というようなこともあります。

死後硬直の解硬とは

ここまでは死後硬直について解説しました。それでは、死後硬直と一緒に説明されることの多い「解硬」とはなんでしょうか。

死後硬直のあとの解硬

動物が亡くなると、死後硬直がしばらく続いたあと、再び筋肉が緩んでいきます。関節などが曲がらない程固まっていた遺体も、再び柔らかくなります。場合によっては、この時に体液や糞尿などが出てくることもあります。

このように、死後硬直が起きたあとに体が再び柔らかくなる現象を「解硬」と呼びます。解硬は、死後硬直が続くことによって筋線維が損傷され、筋肉の収縮が保てなくなることにより発生します。

犬の死後硬直が終わるタイミング

犬の死後、長いと24時間ほど死後硬直が続き、死後硬直が終わると次に解硬が始まります。解硬は、死後硬直と同じ順番で起こると言われており、顎の筋肉や前肢後肢など比較的小さな筋肉から腹部、背部の大き目の筋肉の順番で起こります。

死後硬直のあと生き返ることがある?

死後硬直後に、愛犬が生き返ったと思う飼い主様もいらっしゃいます。「表情が変わった」、「視線が変わった」、「体が動いた」などの変化に気づき「生き返った」と感じるのです。これは生き返りではなく、死後硬直の解硬によって筋肉の位置が変わり、犬の表情や姿勢が変わったり、わずかに移動したりする現象です。

犬の死後から葬儀までの流れ

犬の死後から葬儀までの流れ

愛犬が亡くなると、誰しもしばらくの間は何も考えられない状態になるかもしれません。しかし、飼い主様の最後の仕事として、遺体の処置や葬儀の準備などがあります。

死亡確認

まずは、犬が死亡したことを確認する必要があります。犬が失神しているだけの場合もありますし、呼吸が止まってもしばらくの間心臓のみが動いている場合もあるため、死亡の確認は慎重に行いましょう。

一番確実な方法は、ペンライトなどで目に光を当てることです。この時、瞳孔が動かなければ死亡が確認できます。心臓が動いていれば、犬の胸の真ん中あたりに触れると鼓動を感じることができるため、心臓の動きも確認しましょう。どうしても心配な場合は、動物病院で確認してもらうという方法もあります。

お清めと安置

死亡の確認ができたら、死後硬直が始まる前に、犬の体をお清めして安置します。犬は死後口やまぶたが開いてしまうことが多いので、まずは口やまぶたをそっと閉じます。前肢後肢は突っ張らせたままではなく、優しく折り曲げます。糞尿などが体から出て汚れていることも多いため、濡れたガーゼなどで汚れを拭き取ります。

体の汚れが落ちにくい場合、ドライシャンプーなどを利用すると綺麗になります。体液などが出続けてしまう場合は、コットンをまるめて詰め込んであげても良いでしょう。ブラッシングして毛並みも整えたら、棺や箱などにドライアイスを敷き詰めて安置し、涼しい場所に移動させます。

葬儀業者などに連絡

遺体を安置できたら、犬の火葬ができる業者などに連絡を行います。犬の火葬は、自治体などでも可能です。ただし、金額などは自治体ごとに異なります。また、自治体での火葬の場合、一般的には廃棄物としての扱いになることが多く、火葬に立ち会うなどはできないため、希望の見送り方によっては業者の利用が最適です。

愛犬が亡くなった直後では、心の整理がつかない場合も多く、家族の予定が合わないこともあるため、火葬は死亡2日以降に行なわれることが多いです。遺体を安置しておける期間は季節や環境によって異なりますが、火葬まで時間がかかる場合はドライアイスなどをたくさん用意して、腐敗を遅らせるように工夫しましょう。

死亡届を提出

犬が亡くなったら、30日以内に犬の死亡届を提出する必要があります。死亡届は、犬の登録を行った自治体に出します。犬の死後は葬儀などやらなくてはならない事が多いですが、忘れず死亡届を出すようにしましょう。

犬の死後硬直に関する注意点

犬の死後硬直に関する注意点

愛犬が亡くなると、比較的早い段階で死後硬直がはじまります。死後硬直を想定して行動しましょう。

死後硬直が始まる前にすること

死後硬直が始まると、解硬するまでは犬の体勢を変えられなくなってしまいます。前肢後肢が突っ張ったままの姿勢では、安らかな姿に見えないですし、棺や木箱、段ボールなどに安置させることが難しいため、死後硬直前に必ず体勢を整える必要があります。

死後硬直後はまぶたや口も閉じられなくなるため、死後硬直がはじまる前にそっと閉じてあげましょう。死後硬直が進むと体のお清めもしづらくなるため、すぐにお清めを行って安置しましょう。

死後硬直が始まったら

死後硬直が始まったあとでも、多少動かせることもあります。無理に動かそうとすると、関節が外れるなどにつながるため、どうしても動かしたい場合は、動かしたい関節の付け根からじんわりと力を入れるイメージでゆっくりと動かすようにしましょう。

目や口は、一度閉じてあげてもまた開いてしまうこともあります。口はリボンなどを結びそっと閉じてあげても良いでしょう。目を何度閉じてあげても開いてしまう場合は、顔の上にタオルなどをかけてあげましょう。

早めに準備でその時に備えましょう

飼い主様にとっては、愛する我が子の死後のことはあまり考えたくないことですね。しかし、犬の寿命は人よりも短く、必ず見送る日がやってきます。今回の記事では、犬の死後に起こる死後硬直について解説し、死後硬直が起こる前に飼い主様がすべきことなどをお伝えしました。

犬の死後は、頭が真っ白になって何もできなくなるかもしれません。飼い主様がすべきことを、あらかじめメモしておくなどの準備をして、いざという時に備えると良いでしょう。