愛猫が歳を重ね、介護が視野に入ると、一人暮らしの飼い主様のなかには介護生活について心配になる方もいらっしゃるかもしれません。一人暮らしの場合、猫の介護を一人で行うのは難しいことも多いでしょう。家族・友人のサポートやペットシッター、老猫ホームなどの利用も検討が必要です。今回は、一人暮らしで老猫を介護するときのポイントを解説します。猫の寿命や老猫の定義、老化症状などについてもお伝えします。

一人暮らしで老猫を介護するポイント

ここでは、一人暮らしでの猫の介護についてお伝えします。一人暮らしの場合、家を空けるのが心配なことが多いでしょう。飼い主様一人だけでの対応が難しい場合の対策についてもお伝えします。

留守にする時間をなるべく減らす

寝たきりの老猫や、重い病気を抱えている猫の場合は、容体が急変することもあります。獣医師からそろそろ何があってもおかしくないなどと知らされた場合は、あとから後悔することのないように、できるだけ留守にする時間を短くすると良いでしょう。いざというときに慌てないように、介護生活がはじまったら、愛猫の最後を見届けられるような体制を準備しておきましょう。

自宅環境を整える

老猫は体の様々な機能が衰えます。体温調節機能も低下するため、気温の変化に弱くなります。できるだけエアコンなどを利用して、室内を一定の温度に保ちましょう。トイレや水の設置は、ベッドやソファなど、猫が過ごすことの多い場所の近くに複数用意するのが理想です。老猫になると免疫も落ちるため、猫が過ごす空間は、常に清潔を保ち病気を防ぎましょう。

ペットカメラを設置する

ペットカメラを設置すると、留守のあいだにも猫の様子を確認できることができて安心です。ペットカメラは商品によって性能がさまざまです。部屋全体を見渡せるものや、夜間でも見えやすいもの、声をかけられるものなどの中から、使いやすいものを選びましょう。猫にとっても飼い主様にとってもできるだけ安心して過ごせるような環境整備が大切です。

家族や友人を頼る

一人暮らしの場合、飼い主様ひとりで見守り続けるのは難しいですね。すべてを自分ひとりで抱え込もうとすると、飼い主様のストレスも溜まり、飼い主様自身が健康を損なう恐れもあります。家族や友人に相談して、留守中などに頼らせてもらえるようにお願いしておくと良いでしょう。

ペットシッターを利用する

一人暮らしの生活では、仕事や体調などさまざまな事情で突然家を空けなければならないときもありますね。家族や友人などに相談する時間もない場合、ペットシッターの利用も良いでしょう。ペットシッターは自宅に来て猫の面倒を見てくれるため、ペットホテルなどとは異なり、環境の変化によるペットへのストレスが少ないのもメリットです。猫専門のペットシッターなど、信頼できて経験豊かなシッターを探すと良いでしょう。

老猫ホームを利用する

愛猫が寝たきりになると、食事介助や排泄・床ズレしないようなサポートなど、24時間付きっきりでの介護が必要になる場合もあります。飼い主様がご自身でサポートすることが難しくなった場合、老猫ホームを検討するのも良いかもしれません。

老猫ホームは費用が高額になることがネックですが、適切な介護を受けられます。終身で入居できる施設もあるため、飼い主自身が高齢の場合や、体調の面などで猫の介護が難しくなった場合に検討する方が多いです。

猫の寿命はどのくらい?

上では猫の介護のついてお伝えしましたが、そもそも猫の寿命は何歳くらいなのでしょうか?

猫の平均寿命

2021年の一般社団法人ペットフード協会による【全国犬猫飼育実態調査】(https://petfood.or.jp/topics/img/211223.pdf)の結果では、猫の寿命は15.66歳でした。現在の猫の寿命は、だいたい、15歳くらいだと言えるでしょう。

猫は年々長寿になってきている傾向があり、平均寿命は2010年の調査より1.3歳も延びています。この背景には、完全室内飼いなどの飼育環境の改善や、獣医療の発展、良質なペットフードの開発などいろいろな要因があります。

猫の年齢を人間に換算してみる

猫が人間よりも長生きするのは難しいですね。猫は、人間の約4倍の速さで歳をとるとも言われています。猫の年齢を、人間に換算すると何歳くらいなのか、一例として、環境省「飼い主のためのペットフード・ガイドララインにおける、猫の年齢の人間換算をご紹介します。

出典:環境省「飼い主のためのペットフード・ガイドライン
https://www.env.go.jp/nature/dobutsu/aigo/2_data/pamph/h2509a/full.pdf 7P

猫の高齢化社会の課題

猫が長寿になってきているというのは、飼い主様にとっては嬉しいことです。しかし、猫も人間と同様に年齢を重ねると、視力・聴力・嗅覚、運動機能や消化機能などが衰え、昔はあまり考えることのなかった、寝たきり猫や高齢猫の介護が増えてきているという課題もあります。

何歳から老猫になるのか?

猫は、何歳くらいから老猫になるのでしょうか?全米動物病院協会と全米猫専門医協会が2021年に出したガイドラインでは、10歳以上の猫を老猫と定義しています。
https://journals.sagepub.com/doi/pdf/10.1177/1098612X21993657
猫の老化には個体差も大きく、その要因としては、人間同様に生活習慣の違いが挙げられます。

例えば、年齢に応じて必要な栄養素が変化します。老猫になったら、老猫用のフードに切り替えるなどの対応が必要です。猫の場合、見た目に老化がほとんど見られない子もいますが、いつまでも若いと過信せず、ケアを取り入れていくことが大切です。

猫の老化症状を知っておこう

猫が老化すると、見た目や行動などにどのような変化が出るのでしょか。単なる老化症状と、病院を受診すべき状態の見分けも難しいですね。ここでは、猫の老化による変化や、動物病院を受診すべき状態についてお伝えします。

目ヤニが増える

老化によって、特に朝起きた時の目ヤニが増えることがあります。しかし、日中も目ヤニが目立ったり、目ヤニで目が開けづらいなどの症状は単なる老化ではなく、病気のサインである可能性もあります。獣医師に相談しましょう。

寝ている時間が増えた

老猫になると、体力・筋肉量の低下により、寝ている時間が増えるでしょう。活動性も低くなり、走ったり、高いところに登るなども少なくなります。老猫の怪我の防止のためにも、あまり高いところに登らせるなどの行動は取らせないような環境にしましょう。

被毛のツヤがなくなり、色が薄くなってきた

老猫になると、自分で毛づくろいをする回数が減少したり、上手に毛づくろいができなくなるため、被毛の状態が悪くなることがあります。白髪が生えたり、全体的に被毛の色が薄くなることもあります。飼い主様の定期的なブラッシングが必要です。

歯に黄ばみが目立つようになった

老猫が抱える代表的な問題が、歯周病などの口内トラブルです。猫の歯の根元あたりが黄ばんでいるのは、歯垢や歯石などが付着しているからです。放っておくと、歯周病につながります。できるだけ早く動物病院を受診して、改善を目指しましょう。猫を飼い始めたら、歯磨きの習慣をつけることは歯周病の防止に効果的です。

今までにない行動が増えた

老猫は、認知機能の低下や精神的な変化により、若いときにはみられなかった異常な行動がみられることがあります。代表的なものに、トイレの失敗や、徘徊、分離不安などが挙げられます。

早めの準備で穏やかな介護生活を

猫との生活の中で、猫が先に年老いていくことは避けられません。老猫と呼ばれるのは10歳くらいからですが、7歳くらいになったら将来の介護も見据えた猫との生活プランを考える必要があります。早い段階で準備をすることで、愛猫に悔いのない老後を送らせてあげられるでしょう。時には人に頼ることも大切です。家族や友人だけでなく、ペットシッターや老猫ホームなどのサービスを調べて、いざという時に利用できるようにしておきましょう。