犬のトレーニングやご褒美におやつを利用している飼い主様は多いでしょう。一方、現代の飼い犬の多くが肥満の問題を抱えています。犬の肥満はさまざまな病気につながり、愛犬の寿命を縮めます。犬の肥満の原因のひとつに、間違ったおやつの与え方が挙げられます。

今回の記事では、犬の肥満がもたらす健康被害を解説し、ダイエットが必要な理由をお伝えします。具体的なダイエット方法や、ダイエット時のおやつ選びについても詳しく紹介します。楽しくダイエットを行いながら、愛犬の健康と長生きを目指しましょう。

犬にダイエットが必要な理由

現代の飼い犬にとって、肥満は大変大きな問題です。ペットフード会社日本ヒルズ・コルゲートが2008年に動物病院を対象に行った調査では、各病院に来院する犬のうち、なんと50%以上が肥満であると回答したそうです。

参照:https://www.jstage.jst.go.jp/article/jpan/24/1/24_46/_pdf/-char/ja

人間の肥満がさまざまな問題を引き起こすことは知られていますが、犬も同様に肥満と病気や寿命には大きな関連があります。前述のヒルズの報告では、肥満が引き起こす疾患として

  1. 呼吸器疾患(気管虚脱、短頭種症候群、喉頭麻痺)
  2. 代謝性疾患(膵炎)
  3. 皮膚疾患(膿皮症、マラセチア外耳炎)
  4. 泌尿器疾患(尿道括約筋機能不全、シュウ酸カルシウム尿石症)
  5. 運動器疾患(椎間板疾患、股関節疾患、十字靭帯断裂)
  6. 腫瘍(乳腺腫瘍、移行上皮癌)

を挙げています。イギリスでは上記に加え

・麻酔時のリスク(麻酔後の覚醒が悪い、麻酔時の心臓や肺への負荷が大きい)

・QOL(quality of life、生活の質)の低下(歩く時の負荷が大きい、遊びが少なくなる)

も問題視しています。

参照:https://www.pethealthnetwork.com/dog-health/dog-diet-nutrition/7-reasons-why-dog-obesity-dangerous

愛犬に長生きを望むのであれば、ダイエットは必須と言えるでしょう。

犬の肥満の基準を知る

犬は犬種により体格が様々なので、肥満のチェックが簡単ではありません。まず体重ですが、多くの犬種では1歳の体重が適正体重です。1歳の時より大幅に体重が増加していれば肥満の可能性があります。次に「ボディコンディションスコア(BSC)」も重要です。

BCSは環境省が出している「飼い主のためのペットフード・ガイドライン」に掲載されている肥満のチェック方法のひとつです。BCSは「3」が平均で「4」以上の犬は肥満の可能性があります。

参照:

https://www.env.go.jp/nature/dobutsu/aigo/2_data/pamph/petfood_guide_1808/pdf/6.pdf

犬のダイエット方法

そもそもなぜ犬が肥満になるのでしょうか。理由は「食事が多すぎる」「運動量が少なすぎる」のどちらか、もしくは両方です。特に食事量に関しては、食事の適量を知らなかったり、ついついあげすぎてしまったりという問題が多いでしょう。ここでは、ダイエットのための食事についてお伝えします。

1日の食事の適量を知る

食事量の適量を一番簡単に知る方法は、フードの袋に書かれている量を守ることです。目分量はNGです。喜ぶからと言って犬が食べなくなるまで与えるのも肥満の大きな原因です。フードの袋に書かれている適正量は、犬の「適正体重」を元に計算されていることが多いです。すでに愛犬が肥満の傾向にある場合、現在の体重ではなく適正体重を元に考えなくてはなりません。

愛犬の適正体重は、犬種ごとに異なります。概ね1歳時の体重が適正体重だと言えますが、特に大型犬では異なります。

ジャパンケンネルクラブのサイトに犬種ごとの適正体重や体格が載っているので、こちらも参考にすると良いでしょう。(https://www.jkc.or.jp/worlddogs/introduction)

現在与えているフード量が適正を大幅に超えている場合、急に餌量を減らすと犬の健康に悪いため、餌量は少しずつ減らしましょう。

食事の与え方に工夫を

フードを食べやすいようにお皿に入れて与える飼い主様も多いでしょう。同じ場所で同じお皿に入ったフードは早食いになり、満腹感を持ちにくくなります。愛犬に満足感を得てもらうためには、あえてフードを探させるなど、遊びながら与える方法もおすすめです。

もともと犬は野生では地面の臭いを嗅ぎ、食べられるものを見つけては食べるという生活をしていました。現在でもその本能が残っていて、臭いを嗅いで好きなものを見つける探索が大好きです。

犬用のコングなどを利用したり、タオルの下に隠すだけでも犬は探すことを楽しめ、食べた量以上の満足感を持つことができます。ただし、この方法は嗅覚が衰えてきている老犬などには向いていないので注意が必要です。

食事の回数を増やす

愛犬の満足感を持たせる方法として、食事の回数を増やす方法もあります。多くの飼い主様は、朝夕の2回フードを与えるでしょう。飼い主様のライフスタイルなどを鑑みて、可能であれば、与える量は変えずに、食事の回数を3回~4回に増やして小分けにするのも効果的です。総合的に食べた量が変わらなくても、犬にとっては食事のタイミングが増えて嬉しい出来事です。

ダイエットに効果的なおやつの選び方

フードの適正量は守っているはずなのに、愛犬が肥満傾向にある原因は、おやつにあるかもしれません。トレーニングやご褒美でおやつをあげ過ぎていませんか?歯磨きガムなども、商品によってはカロリーが高く要注意です。ここでは肥満の原因にしないための、上手なおやつの与え方を解説します。

カロリーゼロ・カロリーオフを選ぶ

ダイエット中はカロリーゼロ・カロリーオフのおやつを選びましょう。カロリーゼロ、カロリーオフという表示を目にすると、本当にカロリーがゼロなのだと思われるかもしれませんが、実際は異なります。

カロリーゼロ・カロリーオフは、栄養表示基準において

  • 100gあたりのカロリーが5キロカロリー未満の商品をカロリーゼロ
  • 100gあたりのカロリーが40キロカロリー未満の食品をカロリーオフ

と定義されています。カロリーが本当にゼロではないため、与えすぎると肥満の原因になることに注意が必要です。

低脂肪のものを選ぶ

適度な脂肪はエネルギー原になったり、脂溶性ビタミンの吸収を促すなど、愛犬の体に欠かせない栄養です。一方、摂取過多になると、肥満の原因となるだけでなく、膵炎などになるリスクもあります。犬にとって必要な脂肪はすでにフードに含まれています。

年齢に見合ったフードを適正量与えていれば、脂肪をおやつで与える必要がありません。おやつにはできるだけ低脂肪の商品を選びましょう。特に、ミニチュア・シュナウザーは遺伝的に高中性脂肪血症になりやすい犬種です。また、シェットランド・シープドッグは高コレステロール血症になりやすい犬種であることが知られています。

高タンパクなものを選ぶ

良質なタンパク質は、犬の体にとって重要です。ダイエット中にもタンパク質は積極的に与えましょう。鶏ささみや鶏むね肉、馬肉、牛肉などの赤身肉、鮭、ヨーグルト、犬用チーズなどを愛犬の好みに応じて与えるのも良いでしょう。

人間用のチーズやビーフジャーキーは塩分などが高すぎるためNGですが、最近では、家庭用フードドライヤーなどが比較的安価で入手できるため、これらを利用してご家庭で牛肉などの赤身肉からジャーキーを手作りすることもできます。手作りジャーキーは安全度も高く飼い主様にとっては作る楽しみもあるでしょう。

おやつは一日のカロリーのうち10%以下に

どんなおやつでも、与えすぎは肥満の原因となります。おやつの量の考え方は、

・1日に与えるフードの総カロリーの10%以下

を目安としましょう。例えば、愛犬に必要なカロリーが1日に300キロカロリーの場合、おやつは30キロカロリー以下とします。残りの270キロカロリー分をフードにしましょう。

盲点なのが歯磨きガムです。歯磨きガムは愛犬の歯に良かれと思って与えることが多いですが、カロリーの高い商品も多いです。純粋なおやつだけでなく、歯磨きガムのように健康のために与えるものがあればその商品のカロリーも確認しましょう。

まとめ

人から餌をもらうことのない野生動物は肥満になりません。愛犬の肥満は飼い主様の責任と言えます。愛犬が少しぽっちゃりしている方が可愛いという意識や、せがまれるとついついおやつをあげてしまうという気の緩みが愛犬の健康を損なうことにつながります。人間が感じる犬の「ぽっちゃり」は多くの場合、すでに肥満であるということを忘れないでください。

家族が多い場合、ひとりひとりは少ししかあげていないつもりでも、全員が与えた量を総合的に考えるとかなりのカロリーオーバーになっていることもあります。家族内でのルール作りも大切です。今回の記事では主に食事面をお伝えしましたが、もちろん運動も大切です。

すでに愛犬が肥満になっている場合、無理なダイエットは健康に悪影響が出ます。ダイエット方法に迷ったら、動物病院で相談するのも良いでしょう。愛犬の健康を守れるのは飼い主様だけです。食事やおやつの与え方や内容を工夫して、愛犬の健康と長生きを目指しましょう。