犬も人と同様、病気になることがあります。そんな時、飼い主様が普段との違いに少しでも早く気付き、迅速に対処ができれば悪化させずに済むことも多いでしょう。

そのためには、犬がどのような病気にかかりやすいのか、どのような症状が見られるのかなど、犬の病気への理解を深めておく必要があります。

今回の記事では、犬がかかりやすい病気、年齢や犬種ごとに注意すべき病気についてご紹介します。ぜひ参考にしてみてください。

犬がかかりやすい病気はおもに5つ

はじめに犬全般がかかりやすい病気を5つご紹介します。

外耳炎

外耳は耳の入口から鼓膜までの間を指し、ここに炎症がおきる病気が外耳炎です。原因には細菌や真菌、寄生虫の感染やアレルギーなどが挙げられます。外耳炎になると、耳をかゆがったり耳垢の量が増えたり、耳から異臭がするといった症状が出ることが多いです。放置すると中耳炎や内耳炎に波及するため、早期に適切な治療を行いましょう。

歯周病

歯周病は最も犬がかかりやすい病気のひとつで、日本では3歳以上の犬の8割近くが歯周病を患っているとも言われています。初期の歯周病は歯茎が赤くなる程度ですが、進行すると炎症が骨にまで波及して、歯が抜けたり膿が溜まって、歯茎や顔に穴が開いたりすることがあります。歯周病巣で細菌が増殖し続けると、血流にのった細菌が心臓や腎臓などの臓器に辿り着き、臓器が障害されて命に関わることもあります。

膵炎

膵炎は膵臓に炎症が起こる病気です。一般的には腹痛や食欲不振、嘔吐などの症状が見られることが多いですが、個体差も大きく症状のみで膵炎かどうかを判断することはできません。膵炎の原因は、脂肪の多い食事や毒物などの誤食のほか、ストレスや遺伝なども関わります。日頃から低脂肪の食事、拾い食いの防止、ストレスの少ない生活を心がけましょう。

椎間板ヘルニア

椎間板ヘルニアは、椎骨と椎骨の間にある椎間板というクッション部が飛び出して脊髄を圧迫する病気です。激しい運動や遺伝、加齢などが原因のひとつです。症状は、どの部分の脊髄をどの程度圧迫しているかによって異なり、グレード1~グレード5に分類されます。症状は、はじめの頃は腰を丸めて歩く程度ですが、グレードが進むにつれて痛みが増して手足や膀胱などの麻痺に進行します。

治療は、グレードが低いうちは薬の投与や安静による内科的な療法を選択しますが、麻痺の程度が深刻な場合などは、外科的に脊髄の圧迫を取り除く手術を行います。

がん

人と同様、犬も高齢化社会となりがんになる子が増えています。がんの原因としては老化や遺伝、ストレスなど多くの要素が挙げられます。がんには色々な種類がありますが、どのがんも初期では症状がないことが多いです。進行すると、がんができた場所によって痩せる、食欲が低下する、体を触った時にしこりに気づく、リンパが腫れるなど様々な症状が現れます。

がんの代表的な治療法は外科療法、化学療法、放射線療法、細胞免疫療法などです。がんの種類によっては完治が可能な場合もあるため早期発見が大切です。

年齢を重ねるごとに注意すべき犬の病気

年齢を重ねるごとに注意すべき犬の病気

年齢によってもかかりやすい病気は異なります。ここでは子犬期、成犬期、シニア期それぞれの年齢で特に注意すべき病気についてお伝えします。

生後~1歳の子犬期

生後最初に飲む母犬の初乳には、母犬が持つ免疫がたくさん含まれており、子犬は母犬の免疫で守られます。母犬から受け継いだ免疫は生後2~4ヵ月で徐々に消えるため、この時期の子犬は感染症にかかりやすくなります。特に、犬パルボウイルス感染症、犬ジステンパーウイルス感染症、ケンネルコフなどは命に関わるため、ワクチン接種で予防することが必要です。

また、子犬期は寄生虫症による栄養失調や、低血糖などをおこしやすい時期です。清潔な環境でしっかり栄養を摂取させるように配慮しましょう。

1~6歳の成犬期

成犬期にかかりやすい病気には色々なものがありますが、皮膚炎や膿皮症など皮膚の病気や、尿路結石、膀胱炎などの尿路系疾患、胃捻転、歯周病など消化器系の疾患には特に注意が必要です。定期的なトリミングやシャンプーを行い、食事管理の徹底で肥満を防止したり、日々のトレーニングや散歩でしっかり運動させてストレスを解消させたりすることも重要です。

6歳以降のシニア期

シニア期にかかりやすい病気としては、認知症、歯周病、心不全、腎不全、関節や脊椎の病気、ホルモンの病気などが挙げられます。これらの病気は初期では症状がわかりにくいものも多く、犬に変化が見られても飼い主様が「年齢の影響だろう」と判断して発覚が遅れることもあります。シニア期の犬の場合、単なる老化現象なのか、病気が潜んでいるのかを確認するためにも普段と異なる様子に気づいたら早めに動物病院を受診しましょう。

犬種別大型犬・中型犬・小型犬がかかりやすい病気

犬の場合、犬種によってもかかりやすい病気は異なります。ここでは犬種別にかかりやすい病気をご紹介します。

大型犬

日本で飼育されている大型犬の代表は、ゴールデンレトリバーやラブラドールレトリバー、セントバーナードなどです。これら大型犬がかかりやすい病気としては、胃捻転、股関節形成不全症、前十字靭帯断裂、拡張型心筋症などが挙げられます。胃捻転は大型犬の中でもセントバーナードやグレートデーンなどのように胸が深い犬種に発生することが多いと言われています。

また、ダルメシアンは遺伝的に尿路結石になりやすいことがわかっています。大型犬と言っても犬種によってもかかりやすい病気が異なるため、愛犬がかかりやすい病気をあらかじめ調べておくと良いでしょう。

中型犬

代表的な中型犬には柴犬やウェルシュコーギー、フレンチブルドック、ボーダーコリーなどたくさんの犬種が挙げられます。大型犬と同様、遺伝が関わる病気も多いため犬種によっても特異的な病気がありますが、アレルギー性皮膚炎など皮膚のトラブルや、膝蓋骨脱臼(パテラ)、椎間板ヘルニアなどの骨や神経系の病気、尿路結石など尿路系の疾患などに注意をしましょう。犬の異変に気付いたら速やかに病院で診てもらうことが大切です。

小型犬

トイプードル、ミニチュアダックスフンド、ヨークシャテリア、チワワ、ポメラニアンなどの小型犬は、現代の日本では人気犬種のトップを占めています。

これら小型犬がかかりやすい病気としては、僧帽弁閉鎖不全症、気管虚脱、膝蓋骨脱臼(パテラ)などが挙げられます。特に高齢になるにつれてこれらの病気になる可能性も高くなるため、定期的な健康診断で早期発見・早期治療を心がけましょう。

犬の飼い主が日頃からチェックしてあげたほうが良い症状

犬の飼い主が日頃からチェックしてあげたほうが良い症状

多くの病気は早期に発見し、治療を開始することでその後の生活の質をあまり落とさずに過ごせることが多いです。日頃から愛犬の状態をよく観察し、異常がみられたらできるだけ早めに動物病院を受診しましょう。

特に便や尿などの排泄物はわかりやすい健康のバロメーターです。便や尿の回数や量、色、においなどに変化がみられたら要注意だと思いましょう。咳やくしゃみをしている、よだれや目やになども病気のサインだと言えます。

また、飼い主様の帰宅時、普段なら走って玄関まで出てくるのに、帰宅に気づいても迎えに来ない、呼びかけに反応が鈍い、散歩に行きたがらないなど行動の変化もよく観察し、異常が続く場合は早めに動物病院を受診しましょう。

年齢や犬種も意識してかかりやすい病気への知識をつけよう

今回の記事では、犬全般がかかりやすい病気について解説し、さらに年齢、犬種ごとに注意すべき病気をお伝えしました。愛犬の健康を守るためには飼い主様の知識も大切です。どのような病気に注意すれば良いのかを知っておけば、いざという時も素早く対応できるでしょう。愛犬がどのような病気にかかりやすいのかわからない時は、かかりつけの動物病院で尋ねてみるのもおすすめです。