猫に少しでも長生きしてもらうために、できるだけ病気を避けたいというのはすべての飼い主様に共通する考えですね。そのために、猫の死因として多いものを知り、予防したいという方も多いでしょう。今回の記事では、代表的な猫の死因を解説し、原因や初期症状などをお伝えします。また、病気を防ぐ方法についてもご紹介するので、ぜひ参考にしてみてください。
目次
猫の死因として代表的な5つの病気
はじめに、猫の死因としてよく挙げられる代表的な5つの病気についてご紹介します。
腎臓病・腎不全
腎不全とは、なんらかの原因で腎臓の機能が低下した状態です。猫は腎臓の病気などが原因で腎不全になりやすく、死因のトップとしても腎不全が挙げられます。特に高齢になると慢性腎不全のリスクが上がります。慢性腎不全になると、低下した腎機能が元に戻ることはなく、徐々に進行します。腎不全の原因は、腎炎や腫瘍など腎臓病の場合と、心臓などの循環器の機能低下による循環不全などが挙げられます。
ガン
腎不全と並んで死因のトップとなるのが、一般的にガンと言われている「悪性腫瘍」です。猫に多いといわれているガンは、リンパ腫、扁平上皮癌、繊維肉腫、肥満細胞腫、メラノーマ、乳腺腫瘍、血管肉腫、移行上皮癌などです。
リンパ腫は血液のガンで、体のどこにでもできる可能性があります。扁平上皮癌、繊維肉腫、肥満細胞腫、メラノーマなどは皮膚や体表などにできるガンです。乳腺腫瘍は乳腺のガンで、血管肉腫は肝臓などにできやすいと言えます。移行上皮癌は膀胱に発生しやすいガンです。
血液のガン | 皮膚や体表にできやすいガン | 内臓にできやすいガン |
---|---|---|
リンパ腫 | 扁平上皮癌、繊維肉腫、肥満細胞腫、メラノーマ | 乳腺腫瘍、血管肉腫、移行上皮癌 |
ガンの原因には色々なことが考えられ、原因不明な場合も多いですが、一般的には
- 老化
- 遺伝
- 免疫力の低下
- 受動喫煙
- 薬品
- ウイルス
- 慢性炎症
- 肥満
などの関与が指摘されています。
FIP(猫伝染性腹膜炎)
FIPは子猫の死因として多い病気です。原因は猫の腸コロナウイルスの突然変異です。腸コロナウイルスはほとんどの猫が保有していますが、通常は免疫によってコントロールされており、FIPを発症することはありません。しかし、なんらかの原因で腸コロナウイルスが変異してFIPを発症すると、進行が早く無治療では100%死亡します。ひと昔前は「不治の病」と言われていましたが、現在では早期治療により助かる可能性も出てきています。
心筋症
心筋症とは、心臓の筋肉である「心筋」に異常が出る病気を指します。心筋症のひとつである「肥大型心筋症」は心臓の「左心室」の壁が厚くなることで心臓が正常なポンプ機能を果たせなくなる病気です。猫に多く、中高齢以降の猫では特にリスクが高いと言えます。心臓の働きが悪くなることで腎機能が低下し、突然死につながることもあります。
血栓塞栓症
血栓塞栓症は、上でお伝えした肥大型心筋症の合併症として引き起こされることが多い病気です。肥大型心筋症になると心臓のポンプ機能が弱まり、血流が停滞しやすくなります。そのため血管内で血栓ができやすくなり、できた血栓がどこかに詰まると「血栓塞栓症」になるのです。
血栓塞栓症は猫の場合、多くが後ろ足に血流を送る「腹部大動脈」にできます。猫には激しい痛みが生じ、下半身への血流低下によって命に危険が生じることも少なくありません。
【病気別】猫がかかる病気の初期症状
上では猫がかかりやすい病気についてお伝えしました。ここではできるだけ初期の段階で病気に気づけるように、各病気の初期症状について解説します。
腎不全の初期症状
初期の腎不全の場合、症状がほとんどありません。飼い主様が気づくことができるようになるのは少し病態が進んだ時なので、できれば症状が出る前に血液検査などで気づいて早めの対処を行うことが大切です。
飼い主様が気づく症状としては、まず多飲多尿が現れます。尿の色が薄くなると感じることも多いでしょう。さらに進行すると
- 元気食欲の低下
- 被毛がばさばさして毛艶が悪くなる
- 皮膚のかさつきなどのトラブル
- 下痢、嘔吐
- だんだんと痩せてくる
- 口臭にアンモニア臭が混じる
- 口内炎ができる
- 尿が出にくくなる
などの症状が現れます。
ガンの初期症状
どのようなガンでも初期では症状がほとんどわかりません。少し進行すると
- 皮膚のしこりや腫れ(皮膚や体表にできやすいガンの場合)
- 元気食欲の低下
- 食欲があっても体重が減少する
- リンパ節の腫れ(リンパ腫の場合)
- 尿や便に血液が混じる
- 嘔吐や下痢などの消化器症状
- 腹水の貯留
- 呼吸困難
などがあらわれます。
FIPの初期症状
FIPには腹水や胸水が溜まるウェットタイプと、肝臓や腎臓などの臓器に化膿性肉芽腫というしこりができるドライタイプがあります。これら両方が混合していることも多いです。どちらも初期症状は現れにくいですが、高熱が出る、元気食欲の消失などが初期の兆候のひとつです。気づいた時にはすでに進行していることもあるため、少しでも様子がおかしければすぐに動物病院を受診することが大切です。
心筋症の初期症状
心筋症も初期症状があまりありません。進行すると、徐々に活動性や呼吸に変化が見られます。たとえば肺に水が溜まったり、胸水が溜まることによって発咳や呼吸困難が現れたりします。また、元気消失、運動を嫌がるなどの症状が出ることもあります。呼吸困難などが出た場合は、すでに病気が進行していると言えるため、一刻も早い動物病院への受診が必要です。
血栓塞栓症の初期症状
血管に血栓が詰まると、詰まった箇所に痛みが生じて猫が激しく鳴くことが多いです。また、痺れや麻痺なども生じます。足先などを触ってみて温かさを感じられなくなることも多いです。猫に多い大腹部動脈血栓の場合、片足、または両足が動かなくなることもあり、この状態になると一刻も早い治療が必要となります。
猫の死因になり得る病気を防ぐ方法
ここまで、猫の死因になり得る病気の解説や初期症状についてお伝えしました。ここからは予防方法についてお伝えします。
バランスのいい食事を与える
日々の食事は健康のために重要なポイントです。猫に必要な栄養素は人や犬とは異なるため、猫専用の「総合栄養食」を選ぶと良いでしょう。猫には良質なタンパク質が豊富に必要ですが、炭水化物はあまり必要ではなく、与えすぎると肥満の原因となります。食事だけでなく、おやつのカロリーや栄養にも気を配ると良いでしょう。
食事だけでなく、いつでも新鮮な水を飲める環境も大切です。猫は自分からすすんで水を飲まないことも多いため、水飲みを複数設置したり、水用のボウルを猫の好む素材に変更するなどの工夫も必要です。
室内だけで飼う
猫の場合、完全室内飼いの方が、外に出るよりも長生きすることがわかっています。この理由は、完全室内飼いであれば感染症や闘争、交通事故などのリスクが、外に出る猫に比べて低くなるからだと言われています。猫に怪我や病気をしてほしくない場合は、できるだけ完全室内飼いにすると良いでしょう。
おかしいと思ったらすぐに病院で受診する
上でお伝えした通り、猫がかかりやすい病気の中には、初期症状がほとんどなく、なんらかの異変が現れた時にはすでに病気が進行していることが少なくありません。異常に気づいた場合は、できるだけ早く動物病院を受診することが必要です。放置すると突然死につながることもあります。また、できるだけ定期的に健康検診を受診し、早期発見、早期治療することが大切です。
猫の長生きのために大切なのは生活環境と定期健診
今回は猫の死因となる可能性のある病気についてお伝えし、初期症状の見極め方や予防方法を解説しました。猫の健康のためには、食事や運動、ストレスのない生活環境が重要です。しかし、いくら気をつけていても病気になることもあるため、定期健診を欠かさず受けて、血液検査の数値などで異変を確認してもらうことも大切です。信頼できる動物病院を探して上手に連携すると良いでしょう。