犬と生活するなかで、散歩は欠かせない重要なものです。散歩には、飼い主様との信頼関係を強めたり、犬のストレスや運動不足を解消して健康を維持する効果や、社会性を身につけられるといったメリットがあります。さらに、犬だけではなく、散歩は飼い主様自身の健康にも良い影響があります。

今回は、愛犬との散歩をさらに楽しくするために、必要な散歩の時間や回数など基本的な知識をお伝えします。安全に散歩するために、気をつける注意事項なども解説しますので、ぜひ最後まで読んでみてください。

犬が健康に過ごすためには散歩が必要

犬というと、飼い主様と散歩をする動物だというイメージがありますね。多くの飼育書などにも「犬は散歩が必要な動物」と書かれているでしょう。犬は散歩することで、飼い主様と一緒に楽しい体験をして飼い主様への信頼関係を強めます。

さらに、散歩はストレス解消にもつながるほか運動不足への対策にも有効で、肥満筋力低下を防ぐ効果も期待できます。また、犬は社会性のある動物なので、外に出て地域の人々や他の犬と出会うことも楽しみにしています。

犬と飼い主にとっての散歩のメリット

犬にとって、散歩は楽しみな時間というだけでなく、健康維持のためにも欠かせません。さらに、飼い主様自身の健康へのメリットも、科学的に明らかになってきています。散歩は犬にも飼い主様にも良い影響を与えるのです。

飼い主との絆ができる

犬の散歩が必要な理由のひとつに、飼い主様との絆を強める効果があげられます。犬と飼い主様が楽しい時間を共有することで、犬は「この人といると楽しい!」と理解し、信頼します。犬との信頼関係が深まることで、犬が飼い主様の指示に従いやすくなることもあります。

ストレス解消になる

散歩が犬のストレス解消に役立つというのは、イメージとして理解されていましたが、2014年に科学的に証明した論文が発表されました。

(参照:Behavioural and physiological indicators of shelter dogs’ welfare: Reflections on the no-kill policy on free-ranging dogs in Italy revisited on the basis of 15 years of implementation – ScienceDirect

この論文では、イタリアのシェルターで暮らす97頭の犬を対象に、血液中のストレスホルモンを測定することでストレス度合いを測定しました。その結果、ストレスホルモンを下げることができるのが、定期的な散歩であることが判明しました。

犬はストレスを「ストレスサイン」と呼ばれる行動で示します。ストレスサインには、あくびや目を細める仕草など細かいものから、自分の手足などをしきりに舐めたり、尻尾をがじがじと噛んだりする行動もあります。うなったり吠えたりするのは、かなり苦しい状況になっていることを示します。愛犬にストレスサインがみられたら、ストレス解消のために、散歩の距離や回数などの方法を見直しても良いかもしれません。

運動不足の解消ができる

運動不足は、色々な病気のリスクを高める要因になります。運動をして、筋肉をしっかりつけることで、骨や関節などのトラブルを起こしにくくなります。肥満防止にもつながります。犬にとって肥満は大敵で、アメリカで行われた調査では、肥満のラブラドールレトリバーは適正体重のラブラドールレトリバーと比較して、1.8年も短命だったという結果があります。

(参照:Diet restriction and ageing in the dog: major observations over two decades | British Journal of Nutrition | Cambridge Core

もし、愛犬がすでに肥満傾向の場合、急激なダイエットは危険です。突然の激しい運動は足腰の故障につながりますし、食事量を急に減らすことは栄養状態の悪化を招きます。ダイエットは動物病院に相談しながらの食事制限と継続的な散歩を組み合わせましょう。健康的に過ごせる時間が長くなると、その分寿命も長期化しやすいと言えます。愛犬に長く健康でいてもらうためにも散歩で運動不足を解消しましょう。

社会性が身につく

犬は、初めて会う人や知らない音や臭いに対して警戒心を持ちます。そのため、来客や外出先で見知らぬ人に出会うと吠えてしまうことがあります。家の外で工事をしていたり、救急車が通るなどの刺激にも怯え、ストレスから体調を崩すこともあります。散歩をすると、飼い主様以外の人や他の犬に会うことも多く、車やバイク、電車などの乗り物をはじめ、様々な音や臭いなどの刺激を受けます。このような刺激に自然と慣れていくことで、外の世界への自信を得て、どんな状況でも落ち着いて過ごすことができるようになります。

飼い主の健康にもつながる

散歩は、犬だけでなく飼い主様自身にも良い効果をもたらします。犬との散歩は他の人や犬との交流につながり、定期的に体を動かす効果があるため、散歩を通して健康な生活を送る飼い主様も少なくありません。犬の飼育によって人が受ける良い健康影響に関しては、多くの研究結果からも科学的に証明されています。

例えば、米国心臓協会が発表した研究では、犬を飼っている人は、心停止や脳卒中などの重大な疾病からの回復が良好であることがわかりました。

(参照:Dog ownership associated with longer life, especially among heart attack and stroke survivors | American Heart Association

また、心血管疾患での死亡リスクが低下するという結果も出ています。

(参照:Dog ownership and the risk of cardiovascular disease and death – a nationwide cohort study | Scientific Reports (nature.com)

これらの科学的な研究においても、人への良い健康影響は、犬と一緒に散歩することで運動習慣がついていることが大きな理由であると考察されています。

健康な散歩をするためのポイント

実際に散歩をする時のポイントは、散歩の質と量のバランスです。愛犬と飼い主様にとってのベストなバランスの散歩を探ってみましょう。

散歩の目安

散歩の量は、愛犬の犬種や年齢、体力によって変わります。愛玩犬として改良された小型犬では1回あたり1~2km程度を約20~30分かけて行うのが目安です。小型犬でも狩猟や牧羊などを目的として改良された犬種では、もう少し運動量が必要です。中型犬では1回あたり20〜30分の散歩を毎日2〜3回行うのが基本です。犬種によっては運動量の多い遊びを1時間程度行い充分に運動欲求を満たすことも必要です。大型犬は、ゆっくり歩く散歩を1回に60分程度、1日2回くらい行うのが理想です。激しい運動は足腰に負担がかかり不向きです。

ルートを変えてみる

時々散歩のルートを変えてみると、良いリフレッシュになります。愛犬自身がいつもとは違う道に進みたがる日もあるので、そのような時は犬に任せて行きたいところに行ってみましょう。景色や出会う人などがいつもと異なることで、飼い主様自身も良い刺激が受けられます。

遊びを取り入れる

散歩の途中で公園などのスペースがあれば、遊びも取り入れましょう。ロングリードにしてボールなどで「もってこい」をしたり、落ち葉の下などにおやつを隠して探索させるのも犬が喜びます。おすわりなど、いつものトレーニングも屋外でやると気分も変わります。レトリバー種などは水も好きなので水遊びなどを取り入れるのも良いでしょう。特別なことをしなくても、犬にとってはゴロゴロと背中を地面にこすりつける、好きなところを思い切り掘るというようなことを思う存分できるだけでも十分な遊びになります。

犬の散歩をする時の注意

楽しい散歩中も、一定のルールを守って行動しないと、思わぬ危険に遭遇してしまいます。

リードの使い方

犬にリードをつけることは「動物の愛護および管理に関する法律(動物愛護法)」で義務付けられています。リードは、愛犬を予期せぬ事故から守るために必須です。散歩の最中は、リードにたるみをつけて、犬が飼い主様に寄り添って歩く「リーダーウォーク」がおすすめです。犬を引っ張ったり、反対に飼い主様が引っ張られるような歩き方は危険です。

拾い食いに気を付ける

拾い食いは犬の本能ですが、現代の道にはタバコの吸い殻など、食べると命に関わるものも落ちています。植物も食べると中毒を引き起こすものが多く危険です。拾い食いをさせないように、飼い主様が行き先を確認しましょう。ベンチの横など、ごみやタバコの吸い殻などが多い場所は散歩コースから除外するのも大切です。もしも犬が何かを口に入れてしまった時は、無理に取ろうとすると、反射的に飲み込んでしまうことがあるため「ちょうだい」などのコマンドを練習しておくと良いでしょう。

害虫のへの対策

屋外には、蚊やノミやダニなどの虫もたくさんいます。地域によっては、恐ろしい病気を媒介する「マダニ」もいます。帰宅後は、愛犬の毛をかきわけて、これらの虫がついていないか確認しましょう。できるだけ、定期的にノミダニ予防の薬を使うのが安心でしょう。

愛犬と散歩を楽しみましょう

犬は散歩が大好きな生き物です。散歩は、飼い主様との信頼関係を深める大切なコミュニケーションの時間です。上でお伝えしたように、犬や飼い主様自身のストレスや運動不足の解消につながり、健康維持にも大きなメリットがあります。

一方で、散歩は習慣がついていない犬にとっては、急に連れ出されるとストレスになってしまいます。犬をお迎えしたら、飼い主様と少しずつ外の刺激に慣れる練習をして散歩の習慣をつけると良いでしょう。

飼い主様自身が健康に気をつけることも大切ですね。今回ご紹介した遊びなども取り入れながら、愛犬と飼い主様自身が健康で長生きできるように、より楽しめる方法でストレスフリーな散歩を楽しみましょう。