犬の体を洗う際、人間用のシャンプーを使っても良いのでしょうか?結論からお伝えすると、人間と犬では皮膚のつくりや皮膚の酸性度(pH)などが異なるため、人間用シャンプーを犬に利用することはおすすめできません。今回は、犬に人間用シャンプーの使用がおすすめできない理由を詳しく紹介し、人間用シャンプーと犬用シャンプーの違いを解説します。犬用シャンプーの種類についてもお伝えするので、是非参考にしてみてください。

人間用シャンプーの使用をおすすめできない理由

犬に人間用シャンプーの使用をおすすめできない理由は、犬と人間の皮膚の違いにあります。ここでは、犬と人間の皮膚の違いについて詳しく解説します。

犬は人間よりも皮膚が薄くデリケート

人間も犬も皮膚の基本的な構造は同じです。皮膚は大きく分けて外側から「表皮」「真皮」「皮下組織」という3層で成り立ちます。犬の場合、皮膚自体が人間と比較すると薄いのですが、特に一番外側の「表皮」は人間の1/3程度しかありません。「表皮」は外部からの刺激からその下の組織を守るためのバリアの役目を果たす部分です。

犬の皮膚は「表皮」が薄くデリケートなので、人間用の強いシャンプーを使用すると、バリア機能が破壊されやすいのです。犬は人間よりも体温が高く、皮膚には毛が密集し、皮膚が蒸れやすかったり、内部で細菌が増殖しやすい傾向があります。そのため、表皮のバリア機能が破壊されると容易に最近が皮膚に入り込み、皮膚トラブルに発展します。

犬と人間は皮膚の酸性度(pH)が異なる

犬と人間では、皮膚の酸性度(pH)が異なります。人間の皮膚はボディソープのCMなどでもよく聞くように「弱酸性」で、pHはおおよそ4.5~6.5程度です。一方、犬の皮膚は「中性~弱アルカリ性」でpHはおおよそ6.0~8.0程度です。人間用のシャンプーは、皮膚を「弱酸性」に保つような設計になっており、犬の皮膚には合いません。

犬の皮膚は「弱アルカリ性」で、pH7.0以上の「アルカリ性」に傾くと、被毛のキューティクルが壊れやすくなると言われています。犬用シャンプーは皮膚を「弱アルカリ性」を保つための設計となっているため、犬に適していると言えます。

シャンプーの配合成分によっては大きな皮膚トラブルになる

シャンプーの成分は大きく分けて「界面活性剤」「補助剤」「添加剤」の3つです。「界面活性剤」は汚れを落とすための成分で、シャンプーの主成分です。人間用シャンプーに含まれる「界面活性剤」には色々な種類があり、なかには犬の皮膚への刺激が強すぎるものもあります。

配合成分により、シャンプーの酸性度も酸性からアルカリ性までさまざまです。アルカリ性のシャンプーは犬の毛や皮膚にダメージを与える可能性があるため、人用のシャンプーのなかには犬に合わないものもあります。

人間用シャンプーと犬用シャンプーの違いとは?

人間用シャンプーと犬用シャンプーの違いとは?

上では、人間用シャンプーを犬に使用することをおすすめできない理由をお伝えしました。それでは、人間用シャンプーと犬用シャンプーにはどのような違いがあるのでしょうか?ここでは人間用シャンプーと犬用シャンプーの違いについて詳しく解説します。

基本の配合成分の違い

人間用のシャンプーの目的は、頭皮の皮脂や汚れをしっかりと落とすことです。そのため、強い洗浄力を持つ界面活性剤が使用されていたり、界面活性剤が多量に配合されていることも多いです。そのため、犬にとって刺激が強く、油分が必要以上に洗い流されてしまうというデメリットがあります。皮膚の油分が奪われることで、皮膚の乾燥を招き、フケが多くなるなどのトラブルが発生する可能性もあります。
犬用シャンプーは、犬の皮膚や被毛にあわせた界面活性剤などが使用されています。そのため、犬には刺激が少なく、皮膚トラブルになりにくく安心だと言えるでしょう。

香料

人間用のシャンプーには、香料が多く使用されています。香料は、人間にとってはシャンプー時のリラックス効果や、よい香りが持続するなどのメリットがあります。しかし、犬の嗅覚は、人間の3,000倍~10,000倍も鋭いといわれています。香りが強いシャンプーは犬にとって大きなストレスとなることもあります。

犬用シャンプーは一般的に香料を含まないものや、わずかな香料しか使用されていないものが多いため犬にとってはストレスが少ないと言えます。

トリートメント成分

人間用のシャンプーにはトリートメント成分が配合されることもあります。トリートメント成分は、人間にとっては髪の手触りをよくするメリットがあります。しかし、油分を含む成分であることが多いため、犬の被毛や皮膚が過剰な油分を帯びることにつながります。その結果、被毛や皮膚のべたつきなどのトラブルにつながる可能性があるため、このような成分の配合されていない犬用シャンプーを使用する方が良いでしょう。

泡切れの違い

人間用のシャンプーの泡切れは、使用される界面活性剤の種類などによりさまざまです。犬用シャンプーは、多くの場合、犬への負担を減らすため、泡切れが良くなるように設計されています。犬の場合、シャンプーの泡切れが悪くすすぎに時間がかかると体力的にも負担になりますし、ストレスもかかります。泡切れの良い犬用シャンプーを使用する方が短時間ですすぐことができて犬へのストレスも小さいと言えます。

犬用シャンプーの種類と特徴

犬用シャンプーの種類と特徴

ここまで、犬には人間用シャンプーではなく犬専用に設計された犬用シャンプーを使用する方が良いということをお伝えしました。犬用シャンプーには、大きく2種類があります。ここではそれぞれについてお伝えします。犬の用途に合わせてシャンプーを選びましょう。

薬用シャンプー

皮膚の乾燥、フケ、ベタつき、かゆみなど犬に発生したさまざまな皮膚のトラブルを改善させるためのシャンプーが薬用シャンプーです。これらの薬用シャンプーを用いた治療を、動物病院では「シャンプー療法」と呼ぶこともあります。薬用シャンプーには、細菌や真菌の殺菌作用があるものや、角質を溶かしてターンオーバーを促す作用があるものなどさまざまです。

薬用シャンプーの効果を得るためには、目的に応じたシャンプーを正しく使用することが大切です。かかりつけの獣医師に相談して犬の皮膚の状態に合ったものを紹介してもらい、説明書きの通りに使用しましょう。

美容シャンプー

毛をなめらかな手触りにしたい、艶出しやボリューム調整をしたいなどの要望を満たすためのシャンプーです。犬の皮膚や毛が健康で、毛並みを美しく保ちたいときに使用するシャンプーです。皮膚トラブルを持っている犬に使用した場合、トラブルが悪化する可能性があります。皮膚治療の最中の使用は獣医師に相談しましょう。

美容シャンプーのなかには香料が強いものもあります。犬にストレスがかかることもあるため、香料入りのシャンプーは慎重に選びましょう。

正しいシャンプーで皮膚を健康に

今回は、犬に人間用シャンプーを使用することがおすすめできない理由や、人間用シャンプーと犬用シャンプーの違い、犬用シャンプーの種類などについてお伝えしました。犬のシャンプーでは、シャンプー剤選びと同じくらい正しいシャンプー方法も大切です。使用量やシャンプー剤を洗い流すまでの時間など、シャンプー剤の裏に記載された説明書きを良く読みましょう。効果的なシャンプーの実践で犬の皮膚の健康を守りましょう。