「高齢の愛犬が無駄吠えして困る」と思っている方もいらっしゃるかもしれません。

犬は高齢になると、認知症を患って理由なく吠えたり、体を自由に動かせず欲求を伝えたりするために吠えることがあります。病気などで苦痛があり吠え続けることもあります。

病気などが原因であれば解消できることもありますが、認知症などが原因の場合、完全に無駄吠えをなくすことは難しいでしょう。本記事では、老犬が吠える原因を解説し、飼い主様にできる対策をお伝えします。

老犬が無駄に吠える原因

老犬が無駄に吠えるのにも理由があります。ストレスや、何らかの病気の場合、早急に発見して対応が必要です。以下で原因について説明していきます。

体に痛みを感じている

愛犬は、病気やけがによる痛みから吠えているのかもしれません。急に無駄吠えが増えたら、まずは普段と違うところがないか、体に触れて痛がるところがないか確認しましょう。何か異変を感じたら動物病院を受診してください。

不安を感じている

高齢になると視力や聴力が衰えます。見えない、聞こえないことにより不安感を感じ吠えているのかもしれません。

たとえば、老犬になると、突然大きな音がすると吠え出して、飼い主様に助けを求めるようになることがあります。また、インターホンが鳴ると、誰か来るかもしれないと不安になって、吠え続けるかもしれません。

老犬の吠えは、単なるワガママではなく、不安や恐怖が原因の可能性もあります。スキンシップを増やす、愛犬の寝床を飼い主様のベッドの近くにするなどして、不安を払拭してあげましょう。

何かしらの不快感がある

夜鳴きが治まらないときは、寝床を確認しましょう。暑い、寒い、寝床が硬いなど不快感を訴えるために吠えたり泣いたりしているかもしれません。

老犬になると寝返りを打つのも大変です。愛犬が夜心地よく眠れるように寝床の環境を整えましょう。

認知症の発症

認知症の犬は理由なく吠えることも多いです。認知症は加齢によって増加することがわかっており、アメリカの論文では15~16歳の犬の68%に認知症の症状がみられるという結果もあります。

(Evaluation of cognitive function in the Dog Aging Project: associations with baseline canine characteristics | Scientific Reports (nature.com))

認知症からくる吠えを解消することは難しいですが、ある程度の対策はとれます。

視力や聴力の低下

歳を取り視力が衰えると、周りが見えず移動に戸惑うことがあり、飼い主様に助けを求めるために吠えることがあります。同様に聴力が衰えることにより、自分の鳴き声が小さく聞こえるため吠えが大きくなることがあります。

視力と聴力が低下していないか、日々の生活で確認しながら適切に対処しましょう。

飼い主様にしてほしいことがある

犬は、年齢を重ねるにつれて、我慢できていた要求も、我慢できなくなって吠えることがあります。たとえば、遊びやかまってほしいなどの要求を抑えられずに、吠えてしまいます。 また、加齢により体の自由が利かなくなると、トイレに行きたい、お水が飲みたいなどの要求を伝えるために、吠えることがあるでしょう。愛犬が何を求めているのかを把握して、要求を満たしてあげることが大切です。

老犬が吠えることが増えたら認知症のサインかも

老犬が吠えることが増えたら認知症のサインかも

老犬が急に無駄吠えや夜鳴きをするようになった場合、愛犬が「認知症」を患っている可能性が考えられます。

認知症のチェック項目

目や耳が遠くなってきた、名前を呼んでも反応が鈍いなどの症状を単なる老化だと考えず、認知症特有の行動が出ていないか日々観察しましょう。下記のチェック項目について思い当たる節が複数あれば、認知症の可能性があります。

  • 昼夜逆転している
  • 無駄吠えや夜鳴きをする
  • 物にぶつかる
  • その場でグルグル回る
  • 明らかに通れない狭い場所を通ろうとする
  • 一点を凝視したまま動かない
  • トイレの失敗が多い
  • 理由もなく噛むなど攻撃的になる
  • 刺激に反応せずぼーっとする時間が増える

認知症の進行を防ぐための対策

犬の認知症は完治できないため、進行を遅らせることが中心です。認知症の進行を防ぐためには、脳の活性化を促す必要があります。老犬は、老化により脳細胞が死滅していたり、脳が委縮したりすることがあります。残された健康な脳が衰えないようにしましょう。

脳は適度な刺激を受けると活性化するため、日中ずっと静かに眠らせるだけでなく、散歩に連れ出しましょう。また、散歩のルートを変えるのもおすすめです。自力で歩けなくても犬用のカートなどを使うことで外に連れて行くことができます。

マッサージも、愛犬とのコミュニケーションになり一石二鳥です。犬の認知症そのものの原因はまだはっきりとわかっていません。

しかし、ツシマヤマネコの脳において、人間と同じように脳にβアミロイドの沈着と神経原線維変性がみられることが判明していて、動物の認知症を解明する手がかりになることが期待されています。(動物にもアルツハイマー病はあるのか | 東京大学大学院農学生命科学研究科 (u-tokyo.ac.jp))

認知症の治療法

認知症は、脳の老化により起こる病気で、根治することはできません。しかし、症状を軽減するために、薬物療法や行動療法などの治療法があります。

薬物療法では、抗認知症薬や抗不安薬などの薬を服用することで、症状の緩和を図ります。脳内の神経伝達物質の働きを抑制し、物忘れや徘徊などの症状を改善することが可能です。不安や興奮を抑えることで、吠えなどの症状を軽減できるでしょう。

行動療法では、飼い主様が愛犬に十分な愛情と関わりを与えることで、症状の悪化を防ぐことを目的としています。自宅にいても大切なペットを放置せず、適宜遊んであげてください。

老犬の認知症の治療は、症状や犬の個性に合わせて、獣医師と相談しながら決めることが大切です。

老犬が1日中吠えるときの注意点(接し方)

あなたは一日中吠えてしまう愛犬にとって、正しい接し方ができているでしょうか。ここでは飼い主様が無駄吠えする愛犬に接する時に注意点をお伝えします。

しつけとは関係がない

犬が吠えると、周囲から「しつけができていない」などと言われることがあります。老犬が吠える原因の多くは認知症などによるもので、しつけは全く関係ありません。

飼い主様自身に責任があるわけではないため、自分を責めないようにしましょう。飼い主様の悲しそうな顔は愛犬にとっても悲しいものです。

叱らない・怒らない

叱ったり怒ったりするのも、適切ではありません。認知症などの場合、犬は自分でも理由がわからず吠えることが多いです。叱られるとかえってストレスがかかり、認知症が悪化することがあります。

叱ることや怒ることで飼い主様の気を引けたと捉え、飼い主様にかまって欲しくて繰り返し吠えるようになることもあります。愛犬が吠えていても静かに様子を見守りましょう。抱っこで落ち着く時は抱っこしてあげましょう。

他の症状がないかチェック

老犬が吠えている時、認知症などの加齢によるものだと思い込むと、愛犬の病気や怪我に気づきにくくなります。体のどこかが痛かったり、辛かったりして訴えているのではないかという可能性も忘れず様子を観察するようにしましょう。

老犬が一日吠えるときの対応方法

老犬が吠えている時、認知症などの加齢によるものだと思い込むと、愛犬の病気や怪我に気づきにくくなります。体のどこかが痛かったり、辛かったりして訴えているのではないかという可能性も忘れず様子を観察するようにしましょう。

愛犬が吠え続ける原因が環境にあるかもしれません。日中の刺激がなく夜間に眠れないことが原因かもしれません。

生活の中で愛犬が不快感や違和感を持っていれば解消することで吠える回数を減らせるでしょう。ここでは飼い主様にできる対策をご紹介します。

環境を見直してあげる

愛犬が寒い暑いや寝心地が悪い、不衛生だということを訴えていることもあります。エアコンでの温度調節を行い、ベッドにはお気に入りの毛布などを敷きましょう。ペットシートはこまめに交換し、清潔を保ちましょう。

他にも生活しやすい環境にするために、トイレや食事の場所をまとめて生活範囲を狭くすることやトイレまでの段差をなくすなども効果的です。高齢になると体力・視力・聴力の低下により、普段通りでも生活のしづらさを感じている可能性があります。

適度な運動を与える

適度な刺激を与えて、体だけでなく脳に疲労を与えることが睡眠を促すために効果的です。

散歩による運動が効果的ですが、外を嫌がる場合は、部屋の中でゆっくりとした動きの遊びをしましょう。遊びの刺激は、心身の健康と認知症の進行を遅らせることに繋がります。

また、自力で歩けなくても、外に出て陽の光を浴びたり、色々な臭いを嗅がせて刺激を与えたりすることで夜間ぐっすり寝てくれるかもしれません。室内でも声掛けやマッサージなどのコミュニケーションを心がけましょう。

食事や飲水の調整

もし、無駄吠えが食事や水をあげることで収まるのなら、空腹や喉の渇きが原因かもしれません。老犬になると食事をするのも大変で、食べたい量を食べられていない、飲みたい量を飲めていないことがあります。

食事を数回に分ける、寝る前に水分補給とおやつの時間をとるなど、食事や引水を調整しましょう。ご飯が食べにくくて食べられていないことも考えられるため、台や脚付きの食器を使用して愛犬ひとりでも食べやすいように食事場所を整えることも大切です。

ご近所さんとのトラブルを事前に防ぐ

長い目で考えた時に一番大切なのが、ご近所さんへのトラブル対策です。愛犬が吠えるようになったり、トイレの粗相が増えたりしたら、周囲が騒音や異臭に神経質になるかもしれません。

予め愛犬の状況を伝えてできる限り理解してもらいましょう。周りの理解で飼い主様の気持ちも楽になるでしょう。

寝床を飼い主様と近づける

老犬は身体能力の衰えから、周囲の状況を把握しにくくなり、不安や緊張から吠えることがあります。不安や緊張でストレスを感じている場合は、なるべく馴染みのある環境にペットをいさせてあげましょう。

たとえば、寝床や普段過ごしている場所を飼い主様の近くに移してあげましょう。愛犬は安心感を得られ、吠える回数を減らせます。

昼夜逆転しない睡眠リズムを作る

老犬が夜中に吠えると、近隣の住民にも迷惑をかけてしまいます。そのため、なるべく昼夜逆転にならない工夫をしましょう。

人間と同様にペットも昼間に寝ていると夜になかなか寝付けないことがあります。昼間に寝ていたら、散歩や日光浴をさせて起こす時間を作ってあげてください。夜中に眠れるなら、老犬の鳴き声でトラブルに発展することはなくなるでしょう。

老犬の夜泣きに耐えられない場合は

無駄吠えや夜鳴きが酷く、対策をとってもなかなか改善が見られない場合は、飼い主様の精神的負担が大きくなります。そのせいでストレスやフラストレーションが溜まるならば、早めに専門家を頼りましょう。

動物病院に相談する

無駄吠えは様々な要因が重なり合って起きているため、ひとりで原因を特定するのは難しいかもしれません。しかし、認知症の診断や、病気の有無は動物病院で診てもらうと安心です。

認知症そのものを治す薬はありませんが、認知症からくる不安を取り除く薬やサプリメントなどは獣医師が処方してくれます。その他アロマテラピーなどにより、愛犬の不安が軽減させる、ホリスティック療法も有効です。

犬を預ける

夜鳴きや排泄トラブルが続くと、飼い主様のストレスも大きくなります。精神的な負担だけでなく身体的な疲労も貯まっていくため、介護疲れに陥ってしまうこともあるでしょう。

そういったときは、ペットホテルやペットシッターなどの預かりサービスの利用を検討してください。以下のサービスが受けられます。

  • 食事
  • 排泄のお手伝い
  • お散歩
  • 身体のお手入れ
  • 床ずれ防止のマッサージ

1日中吠えてしまうときは対策を早めに取りましょう

愛犬の無駄吠えは、愛犬にとっても飼い主さんにとっても大きなストレスです。夜鳴きで飼い主様自身が眠れない、周囲からの苦情で心身ともに追い詰められ体調を崩してしまうといった飼い主様もいらっしゃいます。

ついこの間までまだまだ若いと思っていた愛犬も、人間より寿命が短く、気づいたら高齢になっています。自力で色々なことができなくなり介護が必要になることも多いです。

愛犬の老化を理解し、可能な対策をすることで無駄吠えを減らせる可能性があるため、愛犬が吠え続けても叱らず穏やかに接することを心がけましょう。

吠える時は、冷静に環境に何か問題がないかどうか確認すると良いでしょう。対処方法に悩むなら、動物病院に相談し、周囲に話を聞いてもらいましょう。ご近所にもできるだけ愛犬の状況を理解してもらえるようにコミュニケーションを心がけることをおすすめします。