猫との生活がスタートする時は、猫の寿命が尽きるのはまだまだ先のことだと感じ「看取り」について考えることはないかもしれません。しかし、愛猫が年齢を重ねてきたら、看取りについても少しずつ検討しはじめる必要があります。今回の記事では、はじめに猫の老衰症状について解説します。愛猫に老衰症状があらわれはじめたら、飼い主様も心の準備をはじめましょう。看取りの準備や、実際の看取り方法についてもお伝えするので参考にしてみてください。

猫の老衰症状

猫の老衰症状

普段の生活のなかでは事故や病気でもない限り、飼い主が愛猫の看取りについて意識することはありませんね。しかし、猫は人よりも寿命が短い動物です。ここでお伝えするような老衰症状がみられたら、そろそろ看取りについて考えるタイミングだと言えます。また猫の平均寿命は約15歳ですので、年齢としての目安も覚えておくと良いでしょう。

食欲がなくなる

猫の老衰症状のひとつには、食欲の低下が挙げられます。嗅覚などの五感の低下に伴い食への意欲が減ってきたり、消化器官の衰えによって食欲が湧かなくなったり、筋肉量が落ちることで運動量も減って食べる量が少なくなってくるのです。

食欲が低下すると、猫の生命を維持するためのエネルギーは徐々に枯渇します。免疫力も低下する傾向になり、体は徐々に命が尽きる準備をはじめます。フードや水を口に入れても飲み込む量が減って来たらお別れが近い可能性も高いです。

運動量が減る

老化によって体中の筋肉が衰え、骨や関節も弱くなるため、猫の運動能力は低下します。また、目や耳なども悪くなり、認知自体もはっきりしなくなることから、どこかにぶつかる・はさまるなどのトラブルを経験することも増え、徐々に運動を避けるようになることもあります。

猫はもともと寝る時間の長い動物ですが、死期が近づくにつれて寝ている時間はますます延びて、1日中寝ているというような日も多くなるでしょう。

毛並み・毛の艶が悪くなる

老化によって食べ物からの栄養素の消化吸収が上手にできなくなると、毛並みが悪くなったり、毛艶が失われたりするようになります。さらに、年齢を重ねると自分で毛づくろいの回数も減り、猫の見た目は若い時よりもボサボサしてみるようになることが多いでしょう。人の白髪のように毛が全体的に白っぽくなるのも老衰症状のひとつです。

認知機能の低下でミスが増える

人と同様、猫も老化と共に脳の機能が低下し認知能力が衰えます。自分の居場所や行きたい場所がわからなくなることもあり、トイレの場所に迷って粗相したり、同じ場所をぐるぐる回ったりなどの行動がみられるかもしれません。夜中に意味もなく大きな声で鳴き続ける、飼い主様の呼びかけに対する反応も悪くなるなども老衰のサインです。

猫を看取るための準備

愛猫に上でお伝えしたような老衰症状がみられるようになったら、看取りについて考えはじめる必要があります。ここでは看取りの準備についてお伝えします。

心の準備をする

愛猫に老衰症状がみられはじめたら、寿命が近いことを受け入れ心の準備をはじめましょう。離れている家族などがいれば連絡して、できる限り会いに来てもらうと良いでしょう。いつなにが起きてもおかしくないと考え、悔いが残らないようにお世話をすることが大切です。

どこで最期を迎えるかを検討する

愛猫の最期を自宅で迎えるか、動物病院で迎えるかを考えておきましょう。どちらにもメリットとデメリットがあるため、獣医師やご家族と十分に相談して決めると良いでしょう。

自宅で看取る場合は、猫が慣れた場所で大好きな飼い主様と最期の時をリラックスして迎えられる可能性があります。しかし、予期せぬ状態の変化などで猫が苦痛を感じる可能性や、飼い主様が動揺することもあるでしょう。

動物病院に入院させれば、猫の状態にあった緩和治療を受けることができ、猫の苦痛が最小限で済む可能性があります。その一方で、猫にとっては慣れない場所で飼い主様と離れなければならず、飼い主様が最期の瞬間に立ち会えない可能性も高いと言えます。

亡くなったあとについても考えておく

看取りの準備段階では愛猫が亡くなったあとについても考えておきましょう。葬儀などのセレモニーをどのように行いたいのか、埋葬方法はどのようにするのか、遺品であるペット用品などをどうするのかについてひとつひとつ整理しておきます。マイクロチップを挿入している場合は登録の解除についても調べておくと安心です。

猫の最期の看取り方

猫の最期の看取り方

愛猫の最期の瞬間をどのように看取ればいいのか、ここでは具体的な看取りの方法や飼い主様やご家族の向き合い方についてお伝えします。

猫が好きな場所で過ごさせる

お気に入りのベッドや日当たりの良い窓辺など、愛猫が好んで過ごしていた場所に寝る場所を作っておきましょう。猫の最期が近づくにつれて、飼い主様としては「一緒にいたい。」という気持ちが強くなるものです。しかし、猫によっては家族と一定の距離を保ちたい子もいますし、姿を隠したいと感じる子もいます。たとえ最期の瞬間に立ち会えなくても、猫の気持ちを尊重することが一番大切です。

やさしく見守りポジティブな声掛けをする

猫にとって慣れ親しんだ飼い主様の声や笑顔は安心につながります。飼い主様自身がリラックスしてやさしく声かけすることで、猫の苦痛やストレスを緩和させることができるでしょう。何を話して良いのかわからなくなったら「うちに来てくれてありがとう」「一緒にいてくれてありがとう」など感謝の気持ちを伝えてみましょう。楽しかった思い出の話など、猫が安心して旅立てるようにポジティブな声掛けをするように心がけましょう。

言葉につまってしまったら、猫の体を撫でるだけでも構いません。猫にとっては温かい手で撫でられれば安心しますし、飼い主様の心も徐々に落ち着いてくることでしょう。

苦しむことがあることを覚えておく

息をひきとる瞬間は、必ずしも安らかに眠るようなお別れとは限りません。最期の力を振り絞って鳴いたり、手足をばたつかせたりするかもしれません。体が痙攣し、苦しそうな呼吸を繰り返すこともあります。この時に飼い主様が動揺して叫んだり泣いたりすると猫は恐怖を感じます。死の直前に出る苦痛は長くは続かないので、落ち着いて見守り、優しい声をかけ続けましょう。

写真・動画を撮影する

愛猫が嫌がらない場合は、愛猫の様子の記録を残すと良いでしょう。思い出になりますし、他の飼い主様に共有すれば、同じような状況になった時に参考になることもあります。亡くなったあとも綺麗なお花で遺体を飾るなどして写真に残し、ご家族や飼い主様同士で見せ合ってコミュニケーションを取ることでペットロスに陥ることを防げるかもしれません。

また、飼い主様がもう最期の瞬間だと思っていても、猫が命を取り留める可能性もあります。そのような場合、猫にあらわれた症状を動画などで獣医師に見せることで適切な処置のアドバイスをもらえて状態を回復させられることもあります。

猫との生活がはじまった時から「看取り」の覚悟もしておきましょう

今回の記事では、猫の看取りについてお伝えしました。まだまだ若いと思っていても、楽しい日々はあっという間かもしれません。愛猫とのお別れは想像するだけでつらいものですが、必ずやってきます。猫との生活がはじまった瞬間から、看取りについての心の準備が必要なのです。一番大切なのは、日々の猫との時間を悔いなく過ごすことです。人と比べて短い猫の一生を最大限幸せに過ごさせてあげられるように配慮しましょう。