老犬と暮らす飼い主様の中には、愛犬の尿が前より減ってきたり、全く出ないことに不安を感じている方もいるでしょう。原因の多くは、腎臓の機能が徐々に低下する「慢性腎不全」だと言えます。慢性腎不全が進行すると「尿毒症」になり、余命が短いため、最期を意識しながら愛犬との時間を過ごす必要があります。

今回の記事では、老犬の尿が出ない原因や尿毒症について、尿が出なくなった場合の余命などについて詳しくお伝えします。

老犬の尿が出ない原因とは?

尿が出ない原因には、病気とそれ以外が挙げられます。病気の場合、尿が作られても正常に排泄されないケースと、尿そのものが作られないケースがあります。また、病気でなくても何らかの原因で犬が排尿しないこともあります。老犬の場合は、病気によって尿が出ないことが多いと言えるでしょう。

病気によって尿を排泄できないから

尿は腎臓で作られ、膀胱を経由して排泄されます。尿が出ない原因のひとつとして、腎臓で尿が正常に作られても、尿管や膀胱、尿道など、尿の排泄経路に問題があるケースが挙げられます。

排泄経路の代表的な病気のひとつに、尿道結石による「尿道閉塞」が挙げられます。尿道閉塞が起こると尿が排泄されず、これが影響して、腎臓にまで問題が生じて腎不全になる場合もあります。このように、腎臓よりもあとの経路の問題で発生する腎不全のことを「腎後性腎不全」と呼びます。

病気によって尿がつくられないから

尿が出ない原因には、腎臓で尿がつくられない「腎不全」が原因のことがあります。腎不全には、上でお伝えした「腎後性腎不全」のほかに、腎臓そのものに問題がある場合と、腎臓への血流が悪くて尿が作られない場合があります。前者の腎不全を「腎性腎不全」、後者を「腎前性腎不全」と呼びます。

老犬には腎性腎不全と、腎前性腎不全が多い傾向があります。いずれの原因でも、腎不全になると毒素が体内に蓄積して「尿毒症」という命に関わる症状が起きる可能性があります。

普段おしっこをする場所ではないから

例えば、子犬の時からお散歩中など決められた場所でのおしっこをしつけられていると、室内では絶対に排尿しないことがあります。このような時は、外に連れ出すなど、普段おしっこをする場所に連れて行くとすぐに排尿するでしょう。

尿が出ない!老犬の尿毒症とその症状について

尿が出ない!老犬の尿毒症とその症状について

お伝えした通り、腎不全を放置すると尿毒症という末期の状態になります。ここでは尿毒症について詳しくお伝えします。

老犬の尿毒症のおもな症状

尿毒症になると、はじめに食欲不振、下痢、便秘、嘔吐、口臭(アンモニア臭)、体重減少、元気消失、貧血、などが現れます。嘔吐感からしきりに口を動かしたり、涎が出ることもあります。被毛の状態も悪くなることが多いと言えます。

さらに重症化して毒性物質が中枢神経に影響すると、けいれんや発作、昏睡などの神経症状も出はじめます。この状態を放置すると最終的に死に至ります。尿毒症は症状が出始めると進行が早いと言えます。食欲不振など初期症状の段階で、適切な治療を受けましょう。

深刻化した尿毒症の症状

尿毒症が重症化すると、けいれん、発作などの神経症状がみられます。その他、呼吸が早くなったり、意識障害、震え、墨のように黒っぽい血便(メレナ)などが出ることもあります。この時期になると、流動食を口に入れてあげても嚥下することができなくなったり、1日のほとんどを寝て過ごしたり、呼びかけにも反応しなくなることがあります。

口臭だけでなく体全体からアンモニアなどによる異臭がしたり、口内に白い膜がみられることもあります。このような症状がみられた場合、残念ながら余命は短いと言えるでしょう。

尿毒症につながる恐れのある病気や原因

尿毒症の原因は、腎不全(腎臓の機能低下)によって体内に老廃物や毒素が蓄積されることです。腎不全はすでにお伝えした通り、腎前性腎不全、腎性腎不全、腎後性腎不全に分けられます。また、腎機能が急激に低下する「急性腎不全」と腎機能が徐々に低下する「慢性腎不全」に分けられます。

腎不全の要因には、糸球体腎炎など腎臓自体の問題や、心臓など循環器の問題、その他子宮蓄膿症や事故による大量出血など様々なことが挙げられます。老犬の場合、腎臓自体に問題があったり、心臓に問題が出て、徐々に腎臓の機能が低下する「慢性腎不全」になることが多いと言えます。

老犬が尿が出ない状態になったら余命はどれくらい?

老犬が尿が出ない状態になったら余命はどれくらい?

上でお伝えした通り、老犬は腎臓自体や心臓の問題による慢性腎不全になることが多いです。慢性腎不全と診断された時、尿が出ない状態になった場合、犬の余命はどれくらいなのでしょうか。

慢性腎不全になると余命は数年

慢性腎不全に陥ると、治療によって腎臓が元に戻ることはありません。治療次第では進行を遅らせ、生活の質を落とさずに暮らすことができることもありますが、時間の経過と共に次第に悪化します。完治ができないため、症状がではじめた場合の寿命は数年程度だと言えるでしょう。

ただし、寿命については、治療の開始時期、個体差など様々なことが複雑に関係し、一概には言えません。慢性腎不全の治療方法のひとつに、食事療法が挙げられます。慢性腎不全だと診断されたら、できるだけ早い段階で食事療法をはじめると効果的です。

末期(尿毒症)の症状が見られると余命わずか

腎不全と診断され、食欲不振など尿毒症の初期症状が見られるようになった場合、余命は長いとは言えません。長くても数カ月程度だと言えるでしょう。また、けいれんなど重篤な症状がみられた場合は、余命は数時間から数日間である可能性が高いです。

尿毒症の治療は、入院して静脈点滴をし続けるなどの方法がありますが、状況によっては残りの時間を自宅で一緒に過ごすという選択もあり得ます。治療の選択は、獣医師の客観的な意見を聞きながら、飼い主様の持ちや愛犬への思いを尊重して決めると良いでしょう。

死期が直前に迫ったときの老犬の特徴

尿毒症になって死期が直前に迫ると、犬は全く食事を摂らなくなり、流動食すら受けつけない状態となります。眠り続けたり、起きていても周囲への反応が乏しくなるでしょう。嘔吐を繰り返したり、何度も下痢をするなどの症状がみられることもあります。

最後には血圧が下がるため、口の中が白くなったり、体温が下がります。徐々に活動をやめ、眠るように亡くなることも多いでしょう。意識は朦朧としているため、多くの場合は自然死のように大きな苦痛を伴わないと言えます。

老犬の尿が出ないとわかった時点で看取り方などを考えておこう

老犬の尿が出ないとわかった時点で看取り方などを考えておこう

老犬の尿が出ないことが増えた場合、余命はそれ程長くないと言えます。この時点で、飼い主様や家族は、覚悟をもって犬の看取り方や終活について考えはじめる必要があるでしょう。愛犬が天国へ旅立つことは、想像することすら辛い悲しみですが、後悔のない看取りや葬儀方法などの準備をしておけば、いざその時が来ても落ち着いて行動できるでしょう。

看取る場所を家族と共に過ごす自宅にするのか、最後までプロによるケアが受けられる動物病院にするのか、また、葬儀などのお別れのセレモニーをどのような形にするのか、遺品はどう整理するのかなどを家族で事前にしっかりと話し合いましょう。徐々に心の準備を整えることが大切だと言えます。

悔いのないお別れのために

今回は、老犬の尿が出なくなった場合の原因や、余命などについてお伝えしました。早期の治療によって犬の生活の質を保つことは可能ですが、お別れが来ることも受け入れなくてはなりません。

いざその時が来たら、愛犬への感謝を込めて悔いのない葬儀も検討しましょう。犬の葬儀には、立ち合い火葬ができるプランやお花で華やかにお見送りができるセレモニーなどがあります。愛犬が元気なうちに、どのような見送り方をしたいかについても考えておくのも良いでしょう。