猫と生活している中で、猫が腎不全だと診断されることは比較的多いと言えます。腎不全がどういう状態で、今後どんな経過をたどるのか、飼い主として何ができるのかなどが心配な方も多いでしょう。

今回の記事では、腎不全について詳しくお伝えすることで、飼い主様が知識を持ち心の準備をして猫に寄り添った生活ができるようになることを目指します。具体的には、腎不全そのものの解説や、末期症状、末期を迎えた猫にしてあげられることなどをご紹介します。

猫の寿命とかかりやすい病気

猫の寿命はどれくらいなのでしょうか。猫の寿命やかかりやすい病気などを予め知っておくことで、もしもの時にも落ち着いて行動できます。ここでは、猫の寿命と猫がかかりやすい病気について解説します。

猫の寿命

猫の寿命はおよそ15年程度だと言われています。令和4年度の「全国犬猫飼育実態調査」(平成22年3月19日 (petfood.or.jp))の結果では、猫の平均寿命は15.62歳でした。猫の寿命は猫種や飼育環境、個体差などで変わり、猫の中には20年以上生きる長寿の猫もいます。ギネス認定されている史上最長長寿の猫は、なんと38歳まで生きたそうです。

何歳の猫からシニアと呼ぶかについての明確な基準はありませんが、寿命の半分くらいの年齢からをシニアとすることが多いため、7歳くらいからをシニア猫と呼ぶことが多いでしょう。海外では10歳以降の猫をシニア猫と呼ぶこともあります。

猫がかかりやすい病気

猫の場合、年齢によってかかりやすい病気にある程度の特徴があります。例えば、0歳の幼猫では感染症が原因の消化器系疾患にかかりやすく、1~6歳では膀胱炎や尿石症などの泌尿器系疾患が増えます。また7歳以降のシニア猫では、心臓や腎臓など循環器系の疾患も増え始めます。

特に猫では年齢と共に腎臓病が多くなる傾向があります。猫の腎臓病は、概ね5歳くらいで患うことが多く、早い段階で治療を行えば進行を遅らせることができます。しかし、最終的には年齢と共に悪化してしまうのです。

腎不全とはどんな病態 ?

腎不全とはどんな病態 ?

腎臓病の結果「腎不全」になる猫は多いです。腎不全とは、腎臓病などなんらかの原因によって腎臓の機能が75%以上失われた時の病態です。腎臓病になっても、腎臓の働きが失われるまでは腎不全ではありません。腎不全は大きく「慢性腎不全」と「急性腎不全」に分けられます。

慢性腎不全

慢性腎不全になると、腎臓の働きが徐々に低下し、一度機能が低下した腎臓は残念ながら治療で元に戻ることはありません。年齢と共に発生頻度が高まり、猫の場合は5歳くらいから発生することも多いです。

慢性腎不全の原因は不明なことが多いですが、尿細管間質性腎炎、糸球体腎炎、腎盂腎炎などが原因となることもあります。ある種の猫には多発性嚢胞腎も多発します。先天性の場合や遺伝が原因になることもあります。また、歯周病を患っている猫の場合、歯周病変の細菌が流れて腎臓などに病気をおこすことで慢性腎不全になることもあります。

慢性腎不全は、シニア猫の多くにおこる病態で、高齢猫の死因の第一位となっています。一般的に、ステージⅠ~Ⅳに分類され、ステージⅣの慢性腎不全は末期だと言えます。

急性腎不全

急性腎不全は、数時間から数日という短時間で急激に腎臓の機能が低下する病態です。原因には、脱水や出血、ショック、心臓病、火傷、中毒、感染症などさまざまです。これらの原因をすみやかに取り除くことで回復することもありますが、原因が長く続く場合は慢性腎不全を併発することもあります。

急性腎不全は、すぐに死に至る場合も多いため、迅速な対応が必要な病態です。

尿毒症は腎不全末期症状の一つ

尿毒症は腎不全末期症状の一つ

腎臓は、体内で生成された尿素、窒素などの代謝性老廃物を排出する役割を持ちます。腎不全になると、これらの老廃物が排出されず体内に蓄積し、高窒素血症をひきおこします。この状態を尿毒症と呼びます。

尿毒症の症状

尿毒症の症状には様々なものがあります。代表的な症状は、食欲不振、嘔吐、下痢、便秘などです。また、尿臭(アンモニア臭)のする口臭や体臭も強くなります。元気がなくなり、体重が減少傾向になります。被毛の状態も悪くなり、べたつくこともあります。

貧血や不整脈などの循環系の問題も発生し、けいれんなどの神経症状がみられることもあります。最終的には昏睡状態になることも多いです。

尿毒症になった場合の余命

尿毒症になった猫の腎臓の機能はほとんど失われている状態です。腎臓自体の機能回復をさせることはできず、尿毒症そのものに対する対症療法を行うことで苦痛の緩和を行います。

尿毒症の治療として、効果が高い方法は入院させて点滴を続ける治療です。併せて、活性炭などで毒素を吸着させたり、吐き気を止めるための治療を行います。これらの治療を続けることで、猫の体調を比較的良い状態で維持することが可能となります。

静脈への点滴は入院させていないと行えませんが、猫の皮下に点滴をする方法であれば、適切な指導を受けることで一般の飼い主様が自宅で行うことが可能です。尿毒症の治療では、多くの場合、初めは入院して徹底的な治療を行い、猫の状態が落ち着いた後は自宅で飼い主様自身によるケアを続ける提案をされることが多いでしょう。

尿毒症になった場合、速やかな治療を行わないと、余命は数時間から数日間である可能性も高く、多くの場合は1カ月以内に亡くなると言えます。ただし、上記のような徹底的な治療を続けることで、比較的長期に渡り症状をコントロールすることも可能です。

尿毒症になるとどのような最期を迎える?

尿毒症の末期になると、食欲はなくなり、寝ている時間が長くなります。意識障害がおこり、朦朧としている時間が長いでしょう。体のだるさなどは感じるものの、大きな痛みや苦痛はそれほどないケースが多いと言えます。最後には眠ったまま亡くなることもあります。

腎不全末期の猫に飼い主がしてあげられること

腎不全末期の猫に飼い主がしてあげられること

腎不全末期の猫に対しては、飼い主様はできる限りのことをしてあげたいですね。まず大切なのは、猫にストレスを与えないような工夫です。動物病院とこまめに連携を取り、定期的な通院・投薬を行うことで、食欲不振や吐き気など、猫の苦痛となる症状をできるだけ緩和しましょう。

最終的に、自宅でのターミナルケアも必要です。ターミナルケアとは、延命よりも残りの人生を充実させることを重視する医療や看護のことを指します。動物病院との連携でできるだけ苦痛を緩和すると共に、自宅での様々なケアを行って猫が残りの人生を少しでも安らかに過ごせることを目指します。

ターミナルケアの具体的な方法としては、静かな環境を用意する、猫が食べられるものをこまめに与える、体を温める、少しでも口から水分を補給させる、排泄介助や床ずれ予防などが挙げられます。

投薬が猫にとって強いストレスになっている場合は、動物病院とも相談して投薬そのものをやめたり方法を変えることもあります。飼い主様の判断で投薬を勝手にやめてしまうと、症状が悪化したり苦痛が増す可能性もあるため、自己判断で行うことは避けましょう。

腎不全の猫の生活の質を守れるのは飼い主様です

猫の飼い主様にとって、腎不全は避けることが難しいと言える病態です。ただし、腎不全が何なのかを理解し、必要なケアを行うことで、猫が比較的長期に渡って日常生活を送ることが可能となります。

腎不全の原因は不明なことも多いですが、一般的にはこまめな飲水や、適切なフードが予防になるとも言われています。腎不全だと診断されても、最大限のケアができるよう、猫が若くて元気なうちからしっかり情報収集を行い猫の生活の質を守りましょう。